色の恒常性とは|光源が変わっても物の色を同じと感じる仕組みと色順応を解説
色彩検定3級の色の恒常性を、昼光・白熱灯・蛍光灯で照明が変わっても物体色を一定と知覚する仕組みに絞って解説。色順応や明るさの恒常性、写真では色が転びやすい理由、恒常性が崩れる場面まで知覚の安定性に特化します。
色の恒常性とは、照明の光が昼の太陽光から白熱灯や蛍光灯へと変わっても、白いシャツは白、赤いトマトは赤というように、物体そのものの色をほぼ一定のものとして知覚し続ける視覚の働きです。物理的には、物体が目に返してくる光の色みは照明が変わるたびに大きく変動しているのに、私たちの見え方はその変動をかなりの程度打ち消してしまいます。この記事では色彩検定3級の『光と色』の範囲に絞り、恒常性が成り立つしくみ、それを支える色順応、明るさについての恒常性、そしてカメラでは色が転びやすい理由までを、知覚の安定性という一点に焦点を当てて整理します。
ねらいを先に述べると、ゴールは「光が変われば物体に届く光は変わる」という物理の事実と、「それでも物の色は変わって見えにくい」という知覚の事実を、矛盾なく両立させて理解することです。光源そのものの色や演色性の数値、錐体・桿体の構造といった土台は関連記事に譲り、本記事は見えの一定さがどこから来て、どこで崩れるのかに集中します。
色の恒常性とは何か|照明が変わっても物体色を一定と捉える働き
色の恒常性とは、物体に当たる照明光が変化しても、その物体が本来もつ色をほぼ一定に保って知覚する視覚の性質です。鍵になるのは、目に届く光と私たちが感じる色とがイコールではないという点にあります。白い紙を例にとると、夕方の赤みを帯びた室内ではその紙が反射して目に返す光は実際には赤みを含んでいます。それでも私たちはその紙を赤い紙とは思わず、変わらず白い紙だと感じ続けます。視覚が見ているのは反射光そのものの色ではなく、照明の偏りを差し引いた後の物体の反射のクセだからです。
この差し引きを支えているのは、物体ごとに決まった反射の性質です。白い紙はどの波長もよく反射し、黒い炭はどの波長もあまり反射しません。照明が赤く偏れば紙からの反射光も炭からの反射光もそろって赤く偏りますが、両者の反射のクセの差は照明が変わっても保たれます。脳はこの差のパターンを手がかりに、照明の色みを共通成分として取り除き、物体本来の色を取り出していると考えられています。恒常性とは、この引き算がうまく働いている状態だと言い換えられます。
この働きは日常のあらゆる場面で実感できます。白熱灯のオレンジがかった光の下でも白いシャツは白く見え、昼白色蛍光灯の青白い光の下でも肌は肌色に見えます。夕食時の電球色のダイニングでテーブルの白いクロスを見ても、私たちはそれを白として認識し、わざわざ今このクロスはオレンジ色だとは感じません。よく晴れた屋外でハンカチを見て、その後で蛍光灯の室内に持ち込んでも、ハンカチの色はほとんど同じに感じられます。物理的にはこの二つの環境で目に届く光の波長構成はかなり違うのに、見えの色はそろってしまうのです。これは目が、その場を支配している照明の色みをいったん標準の白として受け入れ、そこからの差として物体色を読み取っているためです。
色順応と明るさの恒常性|目が照明の偏りを差し引く二つの働き
色順応とは、ある色みの照明の下に一定時間いると目がその色みに慣れ、それを基準の白とみなすように感度が調整される働きで、恒常性を支える中心的なしくみです。電球色の部屋に入った直後は全体がオレンジっぽく見えますが、しばらくその場にいると、そのオレンジっぽさが薄れ、白いものは白く見えるようになっていきます。これが色順応です。しくみとしては、長く浴びている波長に対する目の感度が相対的に下がることで、照明の偏りを差し引く効果が生まれると説明されます。赤みの強い光を浴び続けると赤に対する感度がやや下がり、結果として赤の偏りが目立たなくなる、という具合です。
ここで区別しておきたいのが、暗い場所で見えるようになる暗順応・明順応との違いです。暗順応や明順応は明るさのレベルに対する慣れであり、色順応は色みに対する慣れで、対象が異なります。恒常性のうち色みの安定に直接効いているのは、この色順応のほうです。色順応は瞬時に完了するわけではなく移り変わりの途中があり、白熱灯の部屋から急に昼光色の部屋へ移った直後には後の部屋がやや青白く感じられ、少し経つと落ち着く、という体験が生まれます。
明るさについても、色とよく似た恒常性が働きます。明るさの恒常性とは、同じ物体が明るい場所にあっても暗い日陰にあっても、白い紙は白・黒い炭は黒というように明るさの段階をほぼ一定に捉える働きです。直射日光の当たる白い紙と日陰に置いた白い紙とでは、実際に目へ届く光の量は日向の紙のほうがずっと多くなります。場合によっては、日陰の白い紙より日向の黒い紙のほうが、目に届く光の量だけ見れば多いことさえあります。それでも私たちは日陰の紙を白、日向の炭を黒と判断します。白い紙は約八割以上の光を返し、黒い炭は数%しか返さないという反射率の大小関係が、照明の強さによらず保たれるからです。色の恒常性が照明の色みを割り引くのに対し、明るさの恒常性は照明の強さを割り引いている、と並べて捉えると整理できます。
恒常性に気づく場面と条件等色|写真の色かぶりと見えの限界
恒常性のおかげでふだんは照明色を意識しませんが、写真やカメラが照明の色をそのまま写し込んで色かぶりを起こすときに、私たちは初めて元の光がどれだけ偏っていたかに気づきます。これは、人の目には照明の偏りを差し引く色順応が働くのに対し、機械にはそのままでは同じ補正が備わっていないためです。白熱灯の部屋でそのまま写真を撮ると、その場で肉眼では白かったはずの壁が、画像全体ごとオレンジ色に転んで写ることがあります。目が色順応で照明のオレンジを差し引いて白に戻していたのに対し、カメラはレンズに入ってきたオレンジの光をありのまま記録するからです。
カメラがこの色かぶりを抑えるには、撮影時の照明色を推定して打ち消すホワイトバランスという補正を別途かける必要があります。つまりカメラのホワイトバランスは、人の色順応にあたる働きを機械的に肩代わりさせる仕組みだと言えます。逆に言えば、写真の色かぶりは、ふだん恒常性がどれほど大きな補正を無意識に行っているかを可視化してくれる現象でもあります。
もう一つ、恒常性の限界を示すのが条件等色です。条件等色とは、ある照明の下では同じ色に見える二つの色が、照明を変えると違う色に見えてしまう現象で、メタメリズムとも呼ばれます。昼光の下でぴったり同じに見えた二枚の布が、白熱灯の下に移すと一方だけ色がずれて見える、ということが起こり得ます。恒常性が物体ごとの色をある程度安定させても、もともと反射の波長特性が異なる二色の見えの一致は、照明が変わると崩れることがあるのです。条件等色の詳しいしくみは関連記事に譲りますが、ここでは恒常性にも届かない限界があるという位置づけで押さえておけば十分です。
実務での活かし方|色合わせは使う環境と同じ光で行う
実務で色を合わせるときは、人の恒常性に頼らず、確認する光源を使用環境と統一することが要点です。なぜなら、これまで見てきたとおり見える色は照明によって変わり、二色の一致は照明が変われば崩れ得るからです。恒常性は照明の偏りをかなり補正してくれますが、その補正の効き具合は人や順応の状態によって違い、写真のように補正が効かない経路もあります。だから自分の目には合って見えるから大丈夫、という判断は危ういのです。
具体的な指針はシンプルです。印刷物の色校正や塗料・生地の色合わせは、その成果物が最終的に使われる場と同じ光のもとで確認します。屋外で使う看板なら昼光に近い光で、電球色のレストランで使うメニューなら電球色に近い光で見比べる、という具合です。複数の見本を比べるときは、全員が同じ照明の下で同じタイミングで見ることもそろえ、色順応の途中ではなく目がその照明に十分慣れてから判断します。要するに、恒常性という便利な補正に寄りかからず、評価する光源そのものを統一して固定することが、色合わせの再現性を高める最短の方法になります。
免責事項
本記事は色彩検定3級の学習者に向けた独自の解説であり、公益社団法人 色彩検定協会が発行する公式テキストや公式問題集を転載・代替するものではありません。色の恒常性・色順応・明るさの恒常性・条件等色などの用語の定義や扱いは、理解しやすさを優先して概略を示しており、改訂によって細部が変わる場合があります。反射率や色みに関する数値も一般的な目安です。
正確な出題範囲・用語の定義・解答基準は、必ず色彩検定協会の公式ウェブサイトおよび最新版の公式テキストでご確認ください。本記事はあくまで試験対策の補助教材としての利用を前提としています。実務で色を扱う際は、本記事で全体像をつかんだうえで、実際の光源と十分なサイズの見本を用いて検証することをおすすめします。
///書いた人
色彩検定3級対策問題道場編集チーム
株式会社狼煙(Noroshi Inc.)が運営するNorolu Beaconの編集チーム。 受験生・色を扱う実務者の方が一発合格できることを目指し、 色彩検定協会の公式テキストとJIS規格を照合しながら、 ひとつひとつの記事を手作業で作成しています。
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