光と色2026-06-11·読了9

色覚の多様性のしくみ|L・M・S錐体とP型D型T型、見分けにくい配色

色彩検定3級で問われる「色覚の多様性」を、L・M・S錐体のはたらきとC型/P型(1型)・D型(2型)・T型(3型)という型の違いから整理。赤と緑、明るい黄緑とオレンジなど見分けにくい配色の組合せと、尊厳に基づく配慮の考え方まで解説します。

色覚の多様性とは、網膜の錐体細胞の感度バランスが人によって異なるため、色の見え方に個人差が生まれることを指します。色を感じ取る錐体にはL(長波長)・M(中波長)・S(短波長)の3種類があり、このどれかのはたらき方が多数派と違うと、赤と緑、明るい黄緑とオレンジといった特定の組合せが見分けにくくなります。

色彩検定3級では、この色覚の多様性をC型・P型(1型)・D型(2型)・T型(3型)という型の違いとして整理し、誰かを劣る・危険と決めつけずに事実として理解することが求められます。本記事は、L・M・S錐体のしくみ、型ごとに見分けにくい配色、そして明度差・彩度差を軸にした型を問わない配色の考え方までを、尊厳を前提に整理します。配色設計の実装面はカラーユニバーサルデザイン(CUD)の記事と役割を分け、ここでは「なぜ見え方が分かれるのか」に焦点を当てます。

色を感じるのはL・M・Sの3種類の錐体

色を感じるのは、網膜にあるL・M・Sの3種類の錐体細胞です。錐体は光を神経の信号へ変える視細胞で、L錐体は長波長(おおまかに赤付近)、M錐体は中波長(緑付近)、S錐体は短波長(青付近)に強く反応します。私たちが無数の色を見分けられるのは、この3種類がそれぞれどのくらい反応したかという「反応の比率」を脳が読み解いているからです。

たとえばオレンジ色の光が目に入ると、L錐体が強め、M錐体がやや弱め、S錐体がほとんど反応しない、という比率が生まれます。黄緑ならL錐体とM錐体がともに強く反応します。色そのものに「オレンジ」「黄緑」というラベルが付いているわけではなく、3つの錐体の反応量の組合せという、いわば3桁の暗号として脳に届き、そこで色として解釈されるわけです。

ここで鍵になるのが、LとMの感度のピークが波長軸の上でかなり近い位置にあるという事実です。Lは赤付近、Mは緑付近に反応しますが、両者の反応する波長域は大きく重なり合っています。この重なりの大きさや位置が人によって少しずつ違うため、同じ光を見ても錐体の反応比率に差が出て、結果として色の見え方に多様性が生まれます。色覚の個人差は、目の善し悪しではなく、この感度バランスの個性として理解するのが正確です。

C型・P型(1型)・D型(2型)・T型(3型)という型の違い

色覚の多様性は、どの錐体の特性が多数派と異なるかによって型に分けられます。一般的な感度バランスを持つ多数派をC型(一般色覚)と呼び、これに対してL錐体側に特性があるP型(1型)、M錐体側に特性があるD型(2型)、S錐体側に特性があるT型(3型)という分類が用いられます。型の名前は、関与する錐体の違いを示す中立的なラベルであって、優劣を表すものではありません。

P型とD型は、いずれもLとMの関係に関わる型で、赤系から緑系にかけての波長を見分けにくいという共通点があります。L錐体の特性が関係するP型(1型)は赤側の感度が低めになりやすく、M錐体の特性が関係するD型(2型)は緑側の弁別に影響が出やすい、という大枠の違いがあります。日常で「赤と緑が見分けにくい」と語られる場面の多くは、このP型・D型に関わるものです。

一方のT型(3型)は、S錐体すなわち短波長側に特性がある型で、青と緑、あるいは黄と紫といった青〜黄方向の弁別に関わります。P型・D型に比べると割合はかなり少ないとされますが、青系の信号や配色を扱うときには考慮に入れる価値があります。型ごとに「どの波長帯が混ざりやすいか」が違うため、まずL・M・Sのどの軸の話かを押さえると、型の特徴を取り違えずに済みます。

型ごとに見分けにくい配色の組合せ

見分けにくい配色は、型によって決まった組合せの傾向があります。P型・D型でもっとも代表的なのが赤と緑で、信号機や赤線・緑線のグラフのように、赤と緑を意味の対比に使う場面で混同が起こりやすくなります。これは色相環の上では大きく離れた2色でも、L・Mの反応比率の差が出にくいために起こる現象です。

さらにD型では、明るい黄緑とオレンジ、赤と茶色、緑と茶色のように、明度が近く色相だけが違う組合せが見分けにくくなります。彩度が低い領域では、灰色とピンク、灰色と水色のような組合せも紛らわしくなります。いずれも「色みは違うのに、その人の錐体では似た信号になってしまう」ペアで、色相の差だけを手がかりにすると情報が抜け落ちます。

T型では、青と緑、黄と灰色、紫と緑のように、短波長がからむ組合せが弁別しにくくなります。型ごとに紛らわしいペアは異なりますが、共通して言えるのは「色相を大きく変えれば誰にでも区別できる、とは限らない」という点です。赤と緑のように色相環で離れていても安心できないことを知っておくと、配色を選ぶときの油断を防げます。

尊厳を前提に事実として理解する=割合と配色の基本

色彩検定3級では、色覚の多様性を医学的な異常ではなく、人の集団に当たり前に存在する事実として扱います。かつて使われた「色盲」「色覚異常」といった語は、劣っている・治すべきだという含みを持つため避けられ、現在は「色覚特性」「色覚の多様性」という中立的な表現が用いられます。本記事も同じ立場で、診断・治療・改善といった話には踏み込みません。

割合の感覚も押さえておきましょう。日本では男性のおよそ5%(20人に1人)、女性のおよそ0.2%が、P型・D型に関わる色覚特性を持つとされます。男性で約5%という数字は、40人の教室なら1人前後、数百人規模の職場なら十数人が該当する計算で、決して例外的な存在ではありません。「自分のまわりにはいない」のではなく、気づいていないだけ、と考えるのが実態に近いといえます。

だからこそ配色は、特定の誰かのための特別な配慮ではなく、最初から一定割合の人がいる前提で設計する対象になります。尊厳を前提にするとは、相手を「配慮される弱者」と位置づけることではなく、見え方の違いを普通のこととして織り込み、誰が見ても情報が届く設計を当たり前にすることです。この視点の転換が、3級で色覚の多様性を学ぶ意義の核心にあたります。

見分けにくさは、色だけに頼った情報伝達で起こりやすくなります。逆に言えば、色以外の手がかりを一つ加えるだけで多くの混同は解消できます。グラフの赤線と緑線なら、実線と破線に変える、線のそばに項目名を直接そえる、といった工夫で、色が判別できなくても内容を追えるようになります。

有効な手立ては大きく三つあります。第一に形を変えること(丸・三角・四角や、アイコンの違い)、第二に位置や順序で区別すること、第三に文字やラベルを併用することです。駅の路線図が色に加えて路線記号と駅番号を併記するのは、この三つを重ねた典型例で、色が見分けにくい人も英数字で目的の路線をたどれます。こうした実装の体系はカラーユニバーサルデザイン(CUD)の記事で詳しく扱います。

型を問わず識別しやすい配色の基本は、色の三属性のうち明度差と彩度差を十分にとることです。色相(色み)の差は型によって伝わり方が変わりますが、明るさである明度の差は、どの型の人にも比較的共通して知覚されやすいという性質があります。赤と緑を隣り合わせるなら、片方を明るく片方を暗くするだけで、境界がぐっと見やすくなります。

彩度差を組み合わせるのも有効です。鮮やかな色と、灰みを帯びた低彩度の色を対にすると、色相が伝わりにくくても「鮮やかさの差」で区別の手がかりが残ります。逆に、明度も彩度も近く色相だけが違う配色(明るい黄緑とオレンジ、灰色とピンクなど)は、もっとも紛れやすい危険な組合せです。配色を決めたら「白黒に変換しても見分けがつくか」を一度想像してみると、明度差が足りているかを手早く点検できます。

免責事項

本記事は色彩検定3級の試験対策を目的とした独自の学習補助であり、公益社団法人 色彩検定協会が発行する公式テキストそのものや、その内容を代替するものではありません。型の呼称・割合・見分けにくい配色の例は理解しやすさを優先した概略であり、用語の定義や出題範囲は最新版の公式テキストおよびJIS規格でご確認ください。

色覚の多様性に関する記述は一般に知られた範囲を配色設計の観点からまとめたもので、医学的な診断・治療・改善を行うものではありません。見え方に不安がある場合の判断は専門機関にゆだねてください。試験対策として用いる際は、色彩検定協会が公表する最新情報や公式テキストとあわせてご確認ください。

///書いた人

色彩検定3級対策問題道場編集チーム

株式会社狼煙(Noroshi Inc.)が運営するNorolu Beaconの編集チーム。 受験生・色を扱う実務者の方が一発合格できることを目指し、 色彩検定協会の公式テキストとJIS規格を照合しながら、 ひとつひとつの記事を手作業で作成しています。

公開日:

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実際の検定は公益社団法人色彩検定協会(A・F・T)が実施します。最終的な合否判定は同協会によるものであり、本サービスの結果は試験合格を約束するものではありません。

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