環境色彩と景観の配色を体系整理|建築・まちづくりの色彩計画と地域に調和する色の考え方
色彩検定3級で出題数の多い環境色彩を、建築外装やまちづくりの色彩計画、自然・歴史と調和する景観色、ベースカラーを低彩度でまとめる原則に絞って解説。室内のインテリアとは異なり、屋外の大面積・遠距離・経年変化を前提に色を選ぶ視点を実例で整理します。
建物の外壁、道路や橋、屋外広告の看板。私たちが街で目にする色の大半は、室内ではなく屋外の大きな環境を構成する色です。色彩検定3級の「色彩と生活」では、こうした屋外の環境を対象にした環境色彩が出題され、面積の大きい色をどう選び、地域とどう調和させるかが問われます。室内のインテリアと同じ配色論で考えると外す場面が多いのが、この分野の難しさです。
本記事では、ベースカラーやアクセントといった配色論の一般原則の再掲は最小限にとどめ、屋外の環境という器に固有の論点だけに絞ります。室内との前提の違い、大面積ベースを低彩度でまとめる景観調和の原則、高彩度色を看板など小面積に限定する面積配分、土地の自然や歴史から色を導く地域性、景観法や自治体ガイドラインによる誘導、そして太陽光と経年で色が動く屋外ならではの留意点までを、実例で結び付けて整理します。
環境色彩とは何か|室内のインテリアと異なる四つの前提
環境色彩とは、建物の外装や道路、橋梁、塀、屋外広告の看板など、屋外の大きな環境を構成する色彩を指します。机の上に置く製品や室内の壁紙と違い、対象が街路や山並みの中に据え置かれ、不特定多数の人が日常的に、しかも本人が選んだわけでもなく目にし続ける点に特徴があります。だからこそ個人の好みだけで決められず、周囲との調和という公共的な視点が前提になります。
室内のインテリア色彩と決定的に違うのは、四つの前提です。第一に、面積が桁違いに大きいこと。壁紙一面どころか建物の外壁全体、ときに街区全体が一つの色面になります。第二に、観察距離が遠いこと。数十メートルから数百メートル離れて見られるため、細かな色の違いは溶けて、大きな色の塊としての印象が支配します。第三に、光源が自然光であること。室内のように一定の照明で見るのではなく、朝夕や季節、天候で刻々と変わる太陽光のもとで見られます。第四に、経年変化があること。竣工直後の色がそのまま続くのではなく、紫外線による退色や雨だれ、汚れ、コケで色は必ず動きます。
この四つの前提を踏まえると、室内で美しい配色がそのまま屋外で通用しない理由が見えてきます。インテリアの記事で扱う床・壁・天井の上下配置や照明の色温度といった室内固有の論点とは別に、屋外では遠距離・大面積・自然光・経年という条件を最初から織り込んで色を選ぶ必要があるのです。
景観調和の原則|大面積ベースは低彩度、強い色は小面積に限定
景観に調和させる最大の原則は、面積の大きい外装などのベースカラーを低彩度・中〜高明度でまとめることです。建物の外壁のように街の広い面積を占める色を高彩度の鮮やかな色にすると、面積効果も相まって街並みから強烈に浮き上がり、周囲の建物や自然と衝突します。そこで外壁の基調色には、彩度を抑えたグレイッシュやベージュ、淡いブラウン、オフホワイトなど、PCCS(日本色研配色体系)でいえばライトグレイッシュ(ltg)やグレイッシュ(g)、ソフト(sf)に近い穏やかなトーンを選ぶのが定石です。
マンセル表色系で考えると、この原則はより具体的になります。マンセルは色相(基本10色相R/YR/Y/GY/G/BG/B/PB/P/RPを各10段階に分け100色相)・明度(0〜10)・彩度の三軸で色を表しますが、景観の基調色では彩度の数値を低く抑えるのが鍵です。実際、多くの自治体の景観色彩ガイドラインは、外壁の基調色についてマンセル彩度をおおむね4以下や6以下といった上限に収める方向で誘導しています。彩度を抑えれば、隣の建物が多少違う色相でも互いに激しくぶつからず、街区全体としてのまとまりが保たれます。
調和のさせ方には、周囲と色相をそろえる方向と、明度・彩度の調子をそろえる方向があります。木々の多い住宅地なら、土や樹皮を思わせる黄みのYR系の低彩度色で穏やかにそろえると風景に溶け込みます。一方、色相が多少ばらついても、彩度を一様に低く明度を中〜高に保てば、トーンが共通するため全体は落ち着いて見えます。屋外では一棟だけで完結せず、隣家や向かいの建物と並んだ見え方を想定して基調色を決めるのが、室内の配色と最も異なる発想です。
では鮮やかな色は一切使えないのかというと、そうではありません。ポイントは面積配分です。高彩度の色は、看板やサイン、出入口の建具、ロゴといった小面積の要素に限定し、景観全体の調和を壊さない範囲でアクセントとして効かせます。配色の三役でいえば、街並みの基調色がベースカラー、屋根や外構などがアソートカラー、そして店舗サインや案内表示がごく狭い面積のアクセントカラーにあたる、という対応です。
具体例で考えます。低彩度のベージュでまとめた商店街の建物群でも、各店舗の看板にビビッド(v)に近い赤や黄を小さく使えば、視認性と誘目性が確保され、通行人は必要な情報をすぐ見つけられます。重要なのは、その高彩度色が建物の外壁全体に広がらないことです。外壁を丸ごと原色で塗れば街並みは壊れますが、同じ色を看板という限られた面積に収めれば、調和を保ったまま機能を果たせます。屋外広告物の面積・位置・色彩に上限を設ける自治体が多いのも、小面積のアクセントが街全体を埋め尽くして基調色の落ち着きを打ち消すのを防ぐためで、基調は低彩度で広く・強い色は小さく、という面積配分は景観行政の実務そのものに組み込まれています。
地域性と社会的背景|自然・歴史から色を導き、景観法が誘導する
その土地らしい色を選ぶには、人工的な色見本帳より先に、まず周囲の自然環境と歴史的建造物を観察するのが出発点です。環境色彩の設計では、土の色、植物の緑、空や海の青、岩肌や石垣の色といった、その土地に昔からある色を手がかりにします。これらは長い年月そこにあって違和感がないと確かめられてきた色であり、新しい建物の色をそこに寄せれば、風景に無理なく溶け込みます。
地域による色の違いは具体的です。火山灰土の黒っぽい大地が広がる地域と、明るい砂質土の地域では、土の色が違うぶん基調色の方向も変わります。漆喰の白壁が連なる城下町、ベンガラ(赤みの酸化鉄塗料)で塗られた格子の町家、焼杉の黒い外壁が並ぶ集落のように、地域には歴史的に蓄積された固有の色の文化があります。こうした既存の街並みの色をマンセル値で読み取り、新築や改修の色をその色域の中に収めることで、土地の記憶を断ち切らずに街を更新できます。観光地や重要伝統的建造物群保存地区では、原色の自動販売機や派手な看板さえ彩度を落とした特別仕様に置き換えられる例があり、その土地の自然と歴史が既に答えの一部を持っている、という視点が核心になります。
こうした地域性の尊重には、個人の配色センスを超えて建物の色が社会的に誘導・規制される背景があります。その中心が、2004年(平成16年)に制定された景観法です。景観法は良好な景観の形成を国の基本方針として位置づけた法律で、これに基づいて景観行政団体となった自治体が景観計画を定め、一定規模以上の建築や工作物について、外観の色彩を含むデザインを事前に届け出させ、必要に応じて指導・助言・勧告を行える仕組みになっています。
実務上は、多くの市区町村が景観計画や景観条例の中に色彩基準を設けています。よくある形は、外壁の基調色についてマンセル値で許容する色相・明度・彩度の範囲を定め、とくに彩度の上限を低めに抑えるものです。基準を超える色を使いたい場合は協議や審査が必要になり、地区によっては景観アドバイザーや審議会が個別に色を確認します。ただし基準の数値や運用は地域ごとに大きく異なり改訂も重ねられるため、受験対策としては景観法という枠組みと自治体が色彩を誘導する仕組みがあるという全体像を押さえれば十分で、特定の数値そのものを暗記する必要はありません。
屋外で色が動く|太陽光・経年・面積効果を見込んでトーンを抑える
屋外で色を選ぶ実務では、室内のサンプルどおりに色は仕上がらない、という前提が欠かせません。理由の一つは光です。屋外は朝・昼・夕方で太陽光の色みと強さが変わり、晴天の順光、曇天の拡散光、西日の赤い光では、同じ外壁でもまったく違う表情を見せます。屋内の安定した照明下で選んだサンプルが、強い直射日光の下では白っぽく飛び、曇りの日には沈んで見える、という食い違いが日常的に起こります。
もう一つの理由が経年変化です。外装材は紫外線で少しずつ退色し、雨だれの筋や排気ガスの汚れ、北面のコケや藻で、竣工時の色から確実にくすんでいきます。明るく鮮やかな色ほど退色や汚れが目立ちやすく、数年後には当初の意図とかけ離れた見え方になりがちです。そのため屋外の色は、新品の色見本で「ちょうどよい」と感じる色より、彩度・明度をあらかじめ一段抑えて選ぶのが定石です。汚れても見苦しくなりにくい中明度・低彩度の色は、長い目で見て景観を保ちやすいという利点もあります。
さらに屋外の大面積の色がサンプルより派手に見える背景には、インテリアと共通する面積効果があります。面積効果とは、同じ色でも面積が大きいほど明度・彩度がより強く感じられる現象です。手のひらの色見本では地味に見えた色も、建物の外壁いっぱいに広げれば、想定よりずっと明るく鮮やかに迫ってきます。室内の壁で起こることが、屋外ではさらに大きな面積で、しかも明るい自然光のもとで増幅されて起こると考えると分かりやすいでしょう。対処の方向はインテリアと同じで、見本で良いと感じた色から彩度を一段、明度をやや控えめに振っておくと、大面積に広げ自然光の下で見たときにちょうどよく収まります。
大面積・遠距離・自然光・経年という屋外の四条件は、いずれも色を強く、あるいは大きく動かす方向に働きます。だからこそ環境色彩では一貫してトーンを抑え気味に選ぶのが通底する考え方であり、確かめ方も室内以上に丁寧にします。小さな色見本だけで決めず、できるだけ大きなサンプルを実際の壁面に当て、晴れの日と曇りの日、朝と夕方で、しかも見られる距離まで離れて確認する。「実物大・実環境・複数の光」での検証が、後悔しない色選びの分かれ目になります。
免責事項
本記事は色彩検定3級の試験対策を目的とした独自の解説であり、公益社団法人 色彩検定協会が発行する公式テキストや公式問題集の内容を転載・代替するものではありません。景観の配色には唯一の正解があるわけではなく、ここで示した彩度の目安や調和の考え方は理解を助けるための一般的な整理です。
とりわけ景観法に基づく色彩基準のマンセル数値や、屋外広告物の規制内容は、自治体ごとに異なり、改訂によっても変わります。本記事中の数値や枠組みは執筆時点の一般的な理解に基づくもので、実際の建築やまちづくりに応用する際は、必ず対象地域の最新の景観計画・条例と、最新版の公式テキストをあわせてご確認ください。
出題範囲・配点・解答基準などの最新かつ正確な情報は、色彩検定協会の公式ウェブサイトおよび最新版の公式テキストでご確認ください。本記事は試験対策の補助教材としての利用を前提としており、記載内容によって生じたいかなる損害についても執筆者および掲載サイトは責任を負いかねます。
///書いた人
色彩検定3級過去問道場編集チーム
株式会社狼煙(Noroshi Inc.)が運営するNorolu Beaconの編集チーム。 受験生・色を扱う実務者の方が一発合格できることを目指し、 色彩検定協会の公式テキストとJIS規格を照合しながら、 ひとつひとつの記事を手作業で作成しています。
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