石垣の積み方と城郭用語の整理|野面積・打込接・切込接、算木積と反り、普請と作事・大手と搦手・狭間と石落とし
石垣は加工度と並べ方の二軸で分けると一気に整理できます。野面積・打込接・切込接、布積と乱積、隅を固める算木積、天端石や間詰石といった各部名称に加え、普請と作事、大手と搦手など混同しやすい城郭用語もまとめて確認します。
石垣は、城を見るときに最も情報量の多い部分です。天守が失われた城でも石垣は残っていることが多く、積み方を読めば、いつごろ、どんな技術で築かれたものかをある程度推し量れます。石垣を読めるようになると、城跡めぐりの解像度が一段上がります。
この記事では、(1)加工度で分ける石垣の三分類、(2)石の並べ方と隅の積み方、(3)石垣各部の名称と勾配の話、(4)混同しやすい城郭用語の整理、という順に進みます。用語は数が多く見えますが、分類の軸を先に決めてしまえば、覚える手間はぐっと軽くなります。
石垣の積み方はどう分ける?|野面積・打込接・切込接
石垣の積み方を分ける第一の軸は、石をどこまで加工しているかです。加工の度合いが低い順に、野面積(のづらづみ)、打込接(うちこみはぎ)、切込接(きりこみはぎ)の三つに整理するのが一般的です。この一軸を押さえるだけで、石垣の写真を見たときの見当がつくようになります。
野面積は、自然のままの石をほとんど加工せずに積む方法です。石の形が不揃いなため表面は凹凸に富み、石と石の間にはすき間ができます。素朴に見えますが、すき間が水を抜くため水はけがよく、堅牢だと評価されることもあります。打込接は、石の接する面や角を叩いて整え、すき間を小さくして積む方法です。石の面がある程度そろうため、野面積よりも整った印象になります。
切込接は、石を方形などに丁寧に加工し、目地がほとんど生じないように隙間なく積む方法です。仕上がりは幾何学的で美しく、城の正面や重要な門まわりなど、人目に触れる箇所に用いられることが多いとされます。加工の手間は大きいため、技術と労力を投じられる条件が整って初めて可能になる積み方です。おおむね野面積から打込接、切込接へと技術が展開していったとされますが、一つの城の中でも場所や修築の時期によって積み方が違うことは珍しくありません。石垣を見たら、まず「どのくらい削ってあるか」を見る、という順番を習慣にするとよいでしょう。
石の並べ方と隅の積み方は?|布積・乱積と算木積
第二の軸が、石をどう並べているかです。横方向の目地が一直線に通るように、石をそろえて水平に積み重ねたものを布積(整層積)、大小の石を不規則に組み合わせて目地が通らないものを乱積(乱層積)と呼びます。加工度の三分類と並べ方の二分類は別の軸なので、打込接の布積、野面積の乱積といったように組み合わせて表現されます。
石垣で最も力がかかり、崩れやすいのが角の部分です。ここを固めるために発達したのが算木積(さんぎづみ)で、細長い直方体の石を用意し、長辺と短辺が交互に来るように上下で向きを変えながら積み上げます。互い違いに噛み合わせることで、角が横方向に引き抜かれにくくなる仕組みです。算木積は時代が下るにつれて石の加工精度が上がり、完成度が高まっていったとされ、隅の仕上がりを見ることが石垣の年代を推し量る手がかりの一つとされています。
石垣を築いた技術者としては、近江の穴太衆(あのうしゅう)が広く知られています。石積みの技術は各地の職人集団によって受け継がれ、城づくりが盛んになる時期に大きな需要を生んだと伝えられます。石垣は単なる壁ではなく、当時の土木技術の到達点が形になったものだと考えると、見え方が変わってきます。
石垣の各部は何と呼ぶ?|根石・天端石・間詰石と反りの意味
石垣の各部にも決まった呼び名があります。最下段に据えられ、全体の荷重を受け止める石を根石、最上段に並べられて石垣の縁をつくる石を天端石(てんばいし)、大きな石どうしのすき間に詰め込む小さな石を間詰石と呼びます。石垣の足元に沿って設けられた細長い平坦地は犬走りと呼ばれ、石垣の保護や通路として機能したとされます。
石垣の面の傾き、すなわち勾配にも意味があります。直線的に立ち上がるものもあれば、下部はゆるやかで上部にいくほど急に反り返るものもあり、後者の美しい曲線は扇の勾配と表現されます。上部が反り返っていると、取り付いて登ろうとしても最後で行き詰まるため、武者返しとも呼ばれます。見た目の美しさと防御の合理性が同じ形の中で両立している、城郭建築らしい部分です。
このほか、虎口の脇などに据えられた特別に大きな石を鏡石と呼びます。実用というより、城を訪れる者に力を示す意図があったとされます。石垣の表面には、どの大名家が担当したかを示すと考えられる刻印が残っている例もあり、大名を動員して行われた大規模な普請の痕跡として注目されます。石垣は無言ですが、読み方を知っていれば多くを語ってくれます。
混同しやすい城郭用語をどう整理する?|普請と作事、大手と搦手
城郭用語でつまずきやすいのは、対になっている言葉です。代表が普請と作事で、普請とは土地を造成し、堀を掘り、石垣を積むといった土木工事のこと、作事とは天守・櫓・門・御殿など建物を建てる建築工事のことを指します。土を扱うのが普請、木を扱うのが作事、と対で覚えると混同しません。城づくりは、縄張で計画を立て、普請で土台を造り、作事で建物を建てるという順に進みました。
城の正面と裏手を指す対の言葉が、大手と搦手です。大手は城の正面にあたる主要な出入口、搦手は背面や側面に設けられた裏口にあたります。大手には格式の高い門が構えられ、搦手は非常時の脱出や逆襲の経路として使われたとされます。城下町の町割も大手側を基準に組み立てられることが多く、大手という言葉は町名として現在も各地に残っています。
建物に付けられた防御の仕掛けにも固有の名前があります。土塀や櫓の壁に開けられた小さな射撃口が狭間(さま)で、弓を射るための縦長のものを矢狭間、鉄砲を撃つための丸や四角のものを鉄砲狭間と呼び分けます。石垣を登ってくる敵を真上から攻撃するために、櫓や塀の床面に開けられた仕掛けが石落としです。どちらも、攻め手の位置をあらかじめ想定して穴の位置と形を決めているという点で共通しており、用語を覚えるときは「誰がどこにいる場面を想定した仕掛けか」まで一緒に押さえると忘れにくくなります。石垣の積み方や各部の呼び名にまつわる設問は、当サイトでも用語のまとまりごとに絞り込んで解けるようにしてあります。
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