構造と縄張2026-08-15·読了9分

縄張とは?曲輪・堀・土塁・虎口でわかる城の防御|輪郭式・連郭式・梯郭式の違いと山城・平山城・平城

城の設計図にあたる縄張の考え方を、曲輪の配置(輪郭式・連郭式・梯郭式)、堀と土塁の種類、虎口や馬出といった出入口の工夫から解説。用語を丸暗記せず、防御の目的から構造を読み解く手順を整理します。

城の構造は、名称を一つずつ暗記するより「攻める側なら、どこをどう突破したいか」という視点から見ると一気に理解が進みます。堀も土塁も虎口も、すべては攻め手の動きを鈍らせ、限られた場所へ誘い込み、そこを狙い撃つという一貫した目的から生まれた仕掛けだからです。

この記事では、(1)縄張という考え方そのもの、(2)曲輪の配置パターン、(3)堀と土塁という防御の主役、(4)虎口と馬出という出入口の工夫、の順に解説します。あわせて、立地による山城・平山城・平城の分け方にも触れます。現地で城跡を歩くときにも、地図や図面を見るときにも、そのまま使える読み方です。

縄張とは何か?|城の設計思想を表す平面のプラン

縄張とは、城をどのように区画し、どこに堀や門を配置するかを決めた平面上の設計のことです。語源は、実際に地面に縄を張って区画を決めたことにあるとされます。建物のデザインではなく、敵をどう防ぐかという設計思想そのものが縄張だと考えると、性格がつかみやすくなります。

縄張を組み立てる基本単位が曲輪(くるわ)です。曲輪とは、堀や土塁・石垣で囲まれた城内の一区画のことで、郭とも書きます。中心となる曲輪を本丸、その外側を二の丸、さらに外を三の丸と呼ぶのが一般的な呼び方です。本丸には城主の居所や天守が置かれ、外側の曲輪ほど日常的な役所や家臣の屋敷といった性格を帯びていきます。このほか、主要な曲輪の周囲を細長く取り巻く帯曲輪、斜面の中腹に設けられる腰曲輪、城の外側に張り出して敵の動きを牽制する出丸など、役割に応じた呼び名があります。

縄張を読むときの鍵になるのが、横矢掛かりという考え方です。これは、城壁や堀の線をわざと折れ曲がらせ、直進してくる敵の側面を射撃できるようにする工夫を指します。壁がまっすぐなら守り手は正面しか狙えませんが、屈折させれば敵の横腹を突けます。城の平面図が不自然に折れ曲がっているのを見つけたら、それは施工の都合ではなく、意図された仕掛けだと考えてよいでしょう。

曲輪の配置にはどんな型がある?|輪郭式・連郭式・梯郭式

曲輪の配置は、本丸を他の曲輪がどう取り囲むかという観点から、いくつかの型に分類されます。代表的なのが、輪郭式・連郭式・梯郭式の三つです。分類名を覚えること自体が目的ではなく、地形と防御方針が配置に表れるという点を押さえるのが本筋です。

輪郭式は、本丸を二の丸が完全に囲み、さらにその外を三の丸が囲むという同心円状の配置です。どの方向から攻められても複数の曲輪を突破しなければ本丸に届かないため守りは堅くなりますが、広い平地と大きな普請の負担が必要になります。連郭式は、本丸・二の丸・三の丸を一列に並べる配置で、細長い尾根や台地の地形に合わせやすいのが特徴です。攻め手は順に突破していく必要がある一方、正面が限られる分だけ側面の守りには工夫が要ります。

梯郭式は、本丸を城地の隅に寄せ、山や川、崖といった天然の地形を背にして、残る二方向か三方向を他の曲輪で固める配置です。自然の要害を防御に組み込むことで普請の量を抑えられる、合理的な配置といえます。実際の城はこれらの型がそのまま当てはまるとは限らず、地形や後世の改修によって折衷的になっている例も少なくありません。立地による分類としては、山上に築く山城、丘陵を利用する平山城、平地に築く平城という三区分が広く用いられます。中世は山城が中心で、近世になるにつれて政庁と城下町を伴う平山城・平城が主流になっていったとされます。

堀と土塁はどう使い分ける?|水堀・空堀・堀切・竪堀

堀と土塁は、掘った土をそのまま盛って壁にするという一組の工事です。堀を深くすればするほど土塁は高くなり、攻め手が越えなければならない高低差は二重に効いてきます。この関係を知っておくと、堀と土塁が必ず隣り合っている理由が腑に落ちます。

堀は、水を湛えるかどうかで水堀と空堀に分かれます。水堀は平地の城で用いられ、渡ることそのものを困難にします。空堀は水を張らない堀で、山城や台地の城に多く見られます。断面の形にも呼び名があり、底がV字に尖るものを薬研堀、底が平たいものを箱堀と呼びます。山城で特徴的なのが堀切と竪堀です。堀切は尾根を横方向に断ち切って、尾根伝いに攻め上がってくる敵の進路を遮る堀です。竪堀は斜面を縦方向に掘り下げ、斜面を横に移動されるのを防ぐ堀で、これを何本も並べたものは畝状竪堀と呼ばれます。

土塁は、土を盛り上げて築いた土手状の防壁のことです。石垣に比べると地味ですが、材料が現地の土で済み、工期も短く、鉄砲の弾を受け止める点でも優れていたとされます。斜面を人工的に削り立てて登れなくした切岸も、土でつくる防御の代表格です。近世城郭では石垣が目立ちますが、江戸時代の城でも外周部は土塁で固めている例が珍しくありません。石垣か土塁かは、城の格ではなく地盤・材料・目的で選ばれたものと考えるのが妥当です。

虎口と馬出は何のためにある?|出入口を弱点にしない工夫

虎口(こぐち)とは、曲輪の出入口のことです。堀と土塁で囲った区画であっても、人と物が出入りする以上、必ずどこかに開口部が要ります。そこが構造上いちばんの弱点になるため、城づくりの工夫が最も集中するのも虎口です。

最も知られた形が枡形虎口です。門を二重に設け、その間に方形の空間をつくる構造で、敵は最初の門を破っても四方を囲まれた狭い空間に入り込むことになり、そこを上から狙い撃たれます。まっすぐ通り抜けられないよう通路を食い違わせた喰違虎口も、勢いをそぐという同じ発想に立った仕掛けです。共通しているのは、敵をせき止めるのではなく、限られた場所へ誘い込んでから討つという考え方です。

虎口の前面に設けられる小さな区画が馬出(うまだし)です。出入口を守る前衛陣地であると同時に、城内から兵を出撃させるときの拠点にもなります。平面が四角いものを角馬出、半円状のものを丸馬出と呼び、地域や築城者の系統によって好まれた形に違いがあるとされます。虎口は守るためだけの構造ではなく、攻めに転じるための構造でもある、という点は見落としやすいところです。なお当サイトでは、縄張や曲輪、堀と土塁、虎口といった区分ごとに演習を選べるようにしてあるので、読んだ直後に手を動かして確かめられます。

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縄張の分類名や各部の呼び方は、資料や地域によって用法に幅がある場合があり、本記事の記述は一般的な整理を示す目安です。実際の城跡の評価は、現地の解説や専門の資料をあわせてご確認ください。日本城郭検定は公益財団法人日本城郭協会が主催する検定で、出題形式・問題数・合格基準・試験日程・検定料などの実施要項は級や実施回によって異なり、変更されることがあるため、受験を検討される際は必ず公式サイト・公式の受験案内で最新情報をご確認ください。当サイトで用いている分野の区分は学習の便宜のための目安であり、実際の検定の出題区分や配点を示すものではありません。

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日本城郭検定 対策問題道場編集チーム

株式会社狼煙(Noroshi Inc.)が運営するNorolu Beaconの編集チーム。 日本城郭検定の合格を目指す方を後押しできるよう、 城郭・歴史の資料を照合しながら、 ひとつひとつの記事を手作業で作成しています。

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