天守の型式と現存天守|望楼型と層塔型の違い、独立式・複合式・連結式・連立式、櫓・門・御殿の役割
天守はどんな建物で、望楼型と層塔型は何が違うのか。独立式・複合式・連結式・連立式という並び方の分類、現存天守と国宝天守、そして櫓・門・御殿といった城の建築それぞれの役割まで、写真とあわせて覚えられる形で整理します。
天守は城の象徴として真っ先に思い浮かぶ建物ですが、実は城の歴史の中では比較的新しく、しかも早い時期に役目を終えていった建築でもあります。型式の分類も、見た目の好みではなく建て方の技術と時代の違いから生まれたものです。
この記事では、(1)天守とはどんな建物か、(2)望楼型と層塔型という建ち方の違い、(3)独立式・複合式・連結式・連立式という配置の違い、(4)現存天守と国宝天守、(5)櫓・門・御殿それぞれの役割、の順に整理します。分類の名前だけを覚えると混乱しますが、どこを見て分けているのかがわかれば、写真を見た瞬間に判断できるようになります。
天守とはどんな建物か?|象徴と司令塔を兼ねた城の中心建築
天守とは、城の中心となる曲輪に建てられた、城で最も高く目立つ多重の建物のことです。有事には周囲を見渡す物見と最後の拠り所という軍事的な役割を担い、平時には城主の権威を領内に示す象徴として機能したとされます。なお天守閣という呼び方は近代以降に広まった通称とされ、江戸時代以前の資料では天守と記されるのが一般的です。
天守が登場するのは、石垣で高く土台を築く技術が確立した16世紀後半以降とされます。それ以前の城には、そもそもあれほどの高層建築を安全に支える基礎がありませんでした。天守は石垣の上に建つのが基本で、天守を載せるために築かれた石垣の土台を天守台と呼びます。
外から数える屋根の数(重)と、内部の床の数(階)が一致しないことがある点も、天守を見るときの要点です。屋根裏を利用した階や、石垣の内部に設けられた地階があるため、外観三重で内部は四階、といった食い違いが生じます。外観の重と内部の階を分けて数えるという習慣は、天守を説明する際の基本的な作法です。
望楼型と層塔型は何が違う?|建ち方でわかる天守の型式
望楼型と層塔型の違いは、下の階の上に物見をどう載せるかという建て方の違いです。望楼型は、入母屋造の大きな屋根を持つ建物の上に、望楼、つまり物見の小さな楼を載せた形式です。下部の建物と上部の望楼が別々の造りに見えるため、シルエットに独特の抑揚が生まれます。
層塔型は、階を上がるごとに規則的に平面を小さくしながら、同じ形の屋根を積み上げていく形式です。全体が塔のようにすっきりと逓減していくのが特徴で、設計が整理されている分、施工が合理的で工期も短く済むとされます。時期としては望楼型が先に現れ、のちに層塔型が主流になっていったとされますが、地域や築城者の意向によって選択には幅があったと考えられています。
見分けるときは、最上部の下に大きな入母屋屋根があるかどうかを見るのが実際的です。屋根の形が途中で切り替わり、上に別の建物が載っているように見えれば望楼型、下から上まで同じ調子で小さくなっていれば層塔型、という判断ができます。あわせて、屋根に付けられる装飾的な破風の呼び名も押さえておくとよいでしょう。三角形の千鳥破風、曲線を描く唐破風、大屋根の妻面にあたる入母屋破風などがあり、破風の組み合わせが天守の表情を決めています。
天守の並び方にはどんな分類がある?|独立式・複合式・連結式・連立式
型式のもう一つの軸が、天守が単独で建つのか、他の建物とつながっているのかという配置の分類です。独立式・複合式・連結式・連立式の四つが基本で、これは天守そのものの形ではなく、周囲との関係を見る分類です。
独立式は、天守が単独で建ち、他の建物と直接つながっていない形です。複合式は、天守に付櫓や小天守が直接接続し、そこを通って天守に入る形式で、出入口を直接攻められにくくする効果があります。連結式は、天守と小天守が渡櫓などでつながれた形式、連立式は、天守と複数の小天守・櫓が渡櫓で環状につながり、中庭を囲む形式です。
並べてみると、独立式から連立式へ向かうほど、天守に取り付くまでに突破しなければならない建物が増えていくことがわかります。つまりこの分類は、見た目の分類であると同時に、防御をどこまで重ねたかの分類でもあるわけです。写真を見て型式を答える練習は、当サイトでも天守や建築にしぼって取り組めるようになっています。
現存天守と国宝天守とは?|櫓・門・御殿の役割もあわせて
現存天守とは、江戸時代までに建てられた天守が、再建ではなくそのまま今日まで伝わっているものを指し、全国で十二の城に残るとされています。弘前城・松本城・丸岡城・犬山城・彦根城・姫路城・松江城・備中松山城・丸亀城・松山城・宇和島城・高知城が、その十二城として挙げられます。このうち松本城・犬山城・彦根城・姫路城・松江城の天守は国宝に指定されているとされ、姫路城は世界文化遺産としても知られています。
現存天守以外の天守は、木造や鉄筋コンクリートで再建されたものや、往時の姿とは異なる形で新たに建てられたものに分かれます。天守が残っているかどうかは、その城の価値を決めるものではありません。むしろ天守を失った城で、櫓や門、石垣、堀が良好に残っている例は数多くあります。
櫓(やぐら)とは、城内に建てられた物見と武器庫を兼ねた建物のことです。曲輪の隅に建つものを隅櫓、石垣の上に細長く続くものを多聞櫓と呼び、後者は塀の代わりに防御線を形づくると同時に、内部を倉庫としても使えるのが利点です。門にも種類があり、石垣や土塀の上に櫓を載せた櫓門は最も厳重な形式とされ、枡形虎口では高麗門と組み合わせて用いられることが多いとされます。
御殿は、城主の居所であり、政務を執り行う政庁でもあった建物です。表向と呼ばれる公的な空間と、奥向と呼ばれる私的な空間に分かれるのが一般的で、大名にとっては天守よりも日常的に使う中心的な建物でした。天守が城の顔だとすれば、御殿は城の中身にあたります。もっとも、御殿は明治以降に取り壊された例が多く、江戸時代の御殿が残る城は限られています。二条城の二の丸御殿がよく知られるほか、川越城や高知城などに本丸御殿が伝わっています。天守だけでなく櫓・門・御殿まで含めて見ることで、城が軍事施設であると同時に政治の場でもあったことが立体的に理解できます。
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