和食の食材はなぜ「旬」で覚えるのか?|走り・盛り・名残と季節の野菜・魚介、郷土料理まで
食材名を五十音順に暗記するより、春夏秋冬の四つの引き出しに入れるほうが思い出す手がかりが増えます。旬が持つ三つの表情、季節の野菜と山菜、初鰹と戻り鰹に代表される魚介の見方、米と穀物から郷土料理へのつながりを整理します。
和食で食材を旬から覚えるのは、季節が味わいと献立、そして行事までを一本の線でつないでくれるからです。食材名を五十音順に並べて暗記するより、春夏秋冬という四つの引き出しに入れていくほうが、思い出すときの手がかりが多くなります。
この記事では、旬という言葉が指す三つの表情、季節ごとの野菜と山菜、魚介の旬の捉え方、そして米と穀物から郷土料理へのつながりまでを順に見ていきます。
旬とは何を指す言葉?|走り・盛り・名残という三つの表情
旬とは、その食材が多く出回り、味わいが充実する時期のことです。和食では、同じ旬のなかでも時期の移ろいを、走り・盛り・名残という三つの言葉で呼び分けてきました。
走りは、その季節に出回りはじめた頃のもので、初物とも呼ばれます。量は少なく、みずみずしさや季節の先ぶれとしての気分が喜ばれます。盛りは最も多く出回る時期で、味わいが充実し、値ごろにもなります。名残はその季節の終わりに差しかかった頃で、去りゆく季節を惜しむ気持ちとともに味わうものとされます。
旬という言葉には、走りをもてはやす気持ちと、名残を惜しむ気持ちの両方が含まれています。同じ食材でも、いつ供されるかによって受け取られ方が変わるというのは、季節の移ろいそのものを味わいの一部として扱ってきた、和食らしい考え方です。
旬をどう扱うかは、盛り付けや器の選び方、献立の言葉づかいにも表れます。走りの食材は少量をあしらいのように、名残の食材は落ち着いた器で、といった具合に、季節の位置づけが料理の見せ方にまで及ぶのが和食の考え方です。
季節の野菜と山菜はどう移り変わる?|芽吹きから根菜まで
野菜と山菜は、春の芽吹き、夏の実もの、秋の実りときのこ、冬の根菜という流れで押さえると整理しやすくなります。四つの季節に代表格をいくつか置いておけば、初めて見る食材でも季節の見当がつきます。