第3石油類の性質と危険性 — 重油・クレオソート油はなぜ「沈む油」と呼ばれるのか
出題数28を誇る乙4頻出テーマ。重油・クレオソート油・アニリンなど第3石油類の引火点・比重・水溶性をまとめ、第1/第2石油類との違いを実例で整理します。
乙4の試験で「ガソリンや灯油は浮く油」と覚えた直後に、重油・クレオソート油の問題で「水より重い、沈む油」と出てきて混乱する受験者は少なくありません。第3石油類は引火点70℃以上200℃未満の重質油類で、比重が1を超える物質と1未満の物質が混在しているため、消火戦略や流出時対応が他類とまったく異なります。
本記事では消防法別表第一に基づく定義から、代表4物質(重油・クレオソート油・アニリン・ニトロベンゼン)の比較、加温時の引火危険、泡消火の重要性までを、第1/第2石油類との違いを意識しながら整理します。出題数28という頻出テーマであり、暗記だけでは取りこぼす細部を具体例で押さえていきます。
第3石油類の定義と指定数量
第3石油類は消防法別表第一備考十六により「1気圧において温度20℃で液状であり、引火点が70℃以上200℃未満のもの」と定義されています。第2石油類(引火点21℃以上70℃未満)と第4石油類(引火点200℃以上250℃未満)の中間に位置する区分で、重油・クレオソート油・アニリン・ニトロベンゼン・グリセリン・エチレングリコールなどが含まれます。
指定数量は非水溶性液体で2,000リットル、水溶性液体で4,000リットルです。第2石油類の非水溶性1,000リットル/水溶性2,000リットルと比べてちょうど2倍に緩和されており、引火点が高い=危険度がやや下がるという扱いになっています。ただし加温されれば一気に危険度が跳ね上がるため、油断は禁物です。
代表4物質の性質比較 — 重油・クレオソート油・アニリン・ニトロベンゼン
重油はC重油で引火点が約70〜150℃、比重0.9〜1.0前後で水よりわずかに軽いものが一般的ですが、銘柄によっては比重1を超える製品もあります。色は褐色〜暗褐色で粘度が高く、加熱しないと流動しにくい性質を持ちます。発熱量が高く、ボイラー燃料や船舶燃料として大量に流通しているため、火災事例も多い物質です。
クレオソート油はコールタールの蒸留分画で、引火点約74℃、比重1.0〜1.1と水より重く、暗緑色〜暗褐色の刺激臭を持つ液体です。木材防腐剤として枕木や電柱に使われ、加温されると独特の蒸気を発します。アニリンは引火点70℃、比重1.02、無色の油状液体ですが空気・光で褐色変化し、毒性が強いため取扱い者の保護具装着が必須です。
ニトロベンゼンは引火点88℃、比重1.20と4物質中最も重く、淡黄色で苦扁桃様の臭気を持ちます。比重1.20という値は出題で頻繁に問われるため、ここだけは重点的に押さえておきましょう。これら4物質は引火点だけ見ると70〜90℃台に密集していますが、比重・水溶性・毒性で性格が大きく異なります。
比重が1を超える「沈む油」と「浮く油」の見分け方
第1石油類(ガソリン0.65〜0.75)、第2石油類(灯油0.78〜0.80)は比重が0.8前後で水より軽く、流出時は水面に広がります。これに対し第3石油類のクレオソート油(1.0〜1.1)・アニリン(1.02)・ニトロベンゼン(1.20)・グリセリン(1.26)・エチレングリコール(1.11)は比重1を超え、水中に沈むか水と分離して下層に溜まるのが特徴です。
「沈む油」は流出事故時に厄介な存在となります。水で希釈・洗い流しを試みると、油が水底に潜り込んでしまい回収が困難になるためです。試験では「水を張ると消火に有効か」という設問で、比重が1を超える物質では水張りが意味をなさない、もしくは逆効果になるという結論を導く問題が出題されます。
一方で重油の多くは比重0.9前後で水より軽いため「浮く油」に分類されます。同じ第3石油類でも重油とクレオソート油で挙動が逆になる点が、混同しやすい論点です。比重1を境に「沈む/浮く」を整理する表を自作しておくと、本試験で迷いません。
水溶性区分・加温時の引火危険・適切な消火方法
非水溶性液体には重油・クレオソート油・アニリン・ニトロベンゼンが該当し、指定数量2,000リットル。水溶性液体にはグリセリン・エチレングリコールが該当し、指定数量4,000リットルとなります。水溶性かどうかの判定は「水に溶けて均一な溶液になるか」で、アニリンは構造に-NH2を持ちますが疎水性のベンゼン環が支配的で非水溶性扱いとなる点に注意してください。
第3石油類は常温では引火しにくいものの、加温された瞬間に第2石油類と同等以上の引火危険を示します。例えば工場の重油タンクで蒸気加熱コイルが過熱し、液温が引火点を超えた状態で点検口を開けた瞬間に引火、というシナリオは実際の火災事例として報告されています。蒸気密度は空気より重く、低所に滞留するため換気不足の地下ピットで爆発に至るケースもあります。
消火方法は窒息消火が基本で、泡消火剤(特に水溶性液体用泡=耐アルコール泡)、二酸化炭素、ハロゲン化物、粉末が有効です。水溶性のグリセリン・エチレングリコールには通常の蛋白泡やフッ素蛋白泡では消えにくく、水溶性液体用泡が必須となります。棒状注水は液面を撹拌して延焼範囲を広げるため厳禁、霧状注水も非水溶性かつ比重1超の物質では効果が限定的です。
重油はA重油・B重油・C重油の3種があり、A重油は軽油に近く流動性が高く船舶や農機具で利用、B重油は中間でほぼ流通減少、C重油はボイラー燃料の主力で粘度が極めて高く加熱しないと送油できません。C重油は引火点が高い反面、加熱供給される現場が多いため、結局は引火危険にさらされる時間が長いという皮肉な性質を持ちます。
第1/第2石油類との引火点・蒸気密度の比較
第1石油類(ガソリン-40℃以下、アセトン-20℃)→第2石油類(灯油40℃以上、軽油45℃以上、酢酸39℃)→第3石油類(70℃以上200℃未満)と引火点が階段状に上昇しています。蒸気密度はいずれも空気より重く、低所滞留という共通の危険があるため、引火点が高いからといって換気を怠るのは禁物です。
試験では「ガソリンと重油、危険なのはどちらか」という問いに対し、常温では引火点の低いガソリンが圧倒的に危険ですが、重油タンクが加熱されている状況では重油も同等以上に危険、という条件付きの答えが求められます。引火点という静的指標と、現場の温度条件という動的要因の両方を見る習慣をつけましょう。
出題数28は分野「性消」の中でも上位の頻度で、比重・水溶性・指定数量・消火方法を組み合わせた4択問題が中心です。重油の比重(0.9前後で水より軽い銘柄が多い)とクレオソート油・ニトロベンゼンの比重(1超で水より重い)を即答できるようにしておくと、本試験での得点源になります。
免責事項
本記事の数値・物性値は一般的な教材・公的資料に基づく目安であり、実際の貯蔵・取扱いにあたっては所轄消防の指導と各事業所の保安規程を最優先してください。タンク仕様や周囲環境によって必要な離隔距離・防油堤容量・消火設備は変動します。
個別運用の正解は事業所ごとに異なります。本記事は乙4試験対策と概要把握のための情報提供であり、特定の製品選定・施工判断・事故対応の根拠としてそのまま用いることはできません。製造者の安全データシート(SDS)と所轄消防への事前協議を必ず行ってください。
試験対策としての解説は法令改正や試験要領の改訂によって陳腐化する可能性があります。最新の消防法・危険物の規制に関する政令・規則、および各都道府県消防本部の運用通知を別途確認のうえ、本記事は補助教材としてご活用ください。
///書いた人
危険物乙4過去問道場編集チーム
株式会社狼煙(Noroshi Inc.)が運営するNorolu Beaconの編集チーム。 受験生・実務従事者の方が一発合格できることを目指し、 現行の消防法令と市販テキストを照合しながら、 ひとつひとつの記事を手作業で作成しています。
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